犬にコーラを飲ませるのはNG!
さすがに、犬にコーラを飲ませる飼い主様はいらっしゃらないですよね。
「炭酸飲料だから?甘いから?」確かにそれも大きな理由ですが、犬にとってコーラに含まれる「カフェイン」や「テオブロミン」という成分は、命を脅かす危険があるのです。
カフェインはコーヒーなどに含まれていますが、テオブロミンもどこかで聞いたことのある成分ではないでしょうか?
テオブロミンはチョコレートに含まれる成分として有名ですが、コーラにも含まれている可能性があり、犬が摂取すると中毒を起こしかねません。
また、コーラをはじめ、ガラナやマテ茶などにはチョコレートよりもカフェインやテオブロミンが多く含まれている場合もあり、注意が必要です。
さて今回は、犬にコーラを飲ませる危険性について、実際に愛犬にコーラを飲ませ続けてしまった海外の事例を織り交ぜながらお話しします。
犬に1年間もコーラを飲ませ続けた飼い主
犬にコーラを飲ませると、虫歯や肥満といった病気だけでなく、中毒を起こす可能性があるため、決して与えてはいけません。
それを知らずに、1年間も愛犬にコーラを飲ませ続けてしまったのは、イギリスに住む中学校教師で1児の母であるKさんです。
Kさんは、4歳と20歳になるジャック・ラッセル・テリアを飼っています。
ある日、コーラに興味を示した老犬のレディにコーラを少量飲ませてみたところ、興奮してはしゃぎだし、毎日おねだりするように。
コーラを飲ませないと、レディがすねてしまうこともあったそうです。
こうしてコーラを老犬に1年間も与え続けた結果……。
老犬の歯は虫歯に侵され、麻酔をして12本を抜歯せざるを得ない状態になってしまったのです。
老犬に麻酔をかけることは大きなリスクが伴いますが、幸いにもレディの命は無事でした。
Kさんは老犬のレディがはしゃぐ姿を見て嬉しかったのかもしれませんが、世間からは「愚かな飼い主だ」と非難が殺到しました。
また、この事実を把握した英国王立動物虐待防止協会は、「犬が必要とする飲み物は水だけです」と述べています。
無知や自分勝手な愛情で起きた事例を踏まえ、コーラにはどのような成分が入っているのか、犬が摂取するとどのような中毒症状を起こすのかを知っておきましょう。
犬にコーラを飲ませてはいけない理由は原料にあり
コーラの原料である「コーラナッツ」や、含有成分の「カフェイン」と「テオブロミン」について詳しくみていきましょう。
コーラの原料・コーラナッツについて
各メーカーから発売されるコーラ飲料の原料には、コーラナッツが使われます。
コーラナッツとは、西アフリカや中南米などに植生する、アオギリ科のコラノキになる種子のことです。
コーラナッツには、カフェインやテオブロミンが含まれており、これらを犬が摂ると中毒症状を起こすことがあるため大変危険です。
コーラナッツに含まれるカフェインの量は?
コーラを販売する某企業のHPには、「レギュラーコーヒーの約1/6、紅茶の約1/3、煎茶の約1/2に相当するカフェインが含まれている」と記載されています。
これでは少しわかりにくいので、液体100ml中のカフェイン含有量に換算してみましょう。
・レギュラーコーヒー浸出液/約60mg→コーラ/10mg
・紅茶浸出液/約30mg→コーラ/10mg
・煎茶浸出液/約20mg→コーラ/10mg
つまり、コーラ100ml当たりには、10mgのカフェインが含まれていることになります。
500mlのペットボトル入りコーラなら、5倍の50mgですね。
コーラナッツに含まれるテオブロミンの量は?
コーラを販売する某企業のHPや文献を調べましたが、具体的な含有量はわかりませんでした。
また、現在販売されているコーラには、コーラナッツエキスを使用していないという情報や、そもそも何をどのくらい入れて製造するのか、レシピ自体が非公開でした。
コーラナッツエキスを使用していないかもしれませんが、少量のテオブロミンを有する可能性は否定できないため、犬にコーラを飲ませてはいけません。
犬にコーラを飲ませると中毒を起こす可能性が!
犬が誤ってコーラを飲んでしまったり、お子さんがコーラを与えてしまったりすることを想定し、どんな中毒症状を起こすのか知っておきましょう。
犬はどのくらいの量のカフェイン摂取で中毒を起こすのか?
カフェインには中枢神経を興奮させる働きがあり、覚醒作用、利尿作用、疲労感の減少といった作用があります。
その反面、頭痛や吐き気、心拍数の増加、手足の震え、下痢、嘔吐、意識障害などを起こす作用も持っているのです。
犬の体重1kgに対して、カフェインを100~200mg摂取すると危険が生じると考えられています。
また、個体差があるため、体重1kgに対して、カフェイン20mgまたはそれ以下の摂取量だったとしても、中毒症状を起こすことがあります。
ヒトの場合、1日のカフェイン摂取量が400mgを超えると、健康被害や中毒のリスクが高まるといわれています。
しかし、たとえ摂取量が少なくても、普段カフェインを摂っていない人が急激にカフェインを摂取した場合は、カフェイン中毒を起こす可能性も。
急激な摂取によるカフェイン中毒は、犬の場合も同様と推測できます。
犬のカフェイン中毒の症状は?
・1~2時間後に落ち着かない行動の出現
・呼吸の乱れ
・興奮
・嘔吐
・下痢
・尿失禁
・ふらつき
・けいれん
・筋硬直
重度のカフェイン中毒に陥った場合、呼吸不全や昏睡状態になり、最悪命を落とすことがあります。
犬はどのくらいの量のテオブロミン摂取で中毒を起こすのか?
テオブロミンはカフェインとよく似た化学構造をしているものの、カフェインより作用が穏やかで興奮作用が少ないのが特徴です。
脳内ホルモンのセロトニンを増加させてリラックス効果をもたらすほか、全身の血流アップ、冷え症改善作用なども期待されています。
その反面、大量摂取により頭痛や震え、発汗を起こすなどマイナスの作用も持っています。
個体差はあるものの、犬の体重1kgに対して、テオブロミンを250~500mg摂取すると、死亡する危険があると考えられています。
ほかにも、犬へのテロブロミンの毒性実験では、体重1kgに対して90~100mgで毒性が現れました。
ヒトの場合では、1日に800mg~1,500mgの摂取により中毒症状が出るようです。
犬のテオブロミン中毒の症状は?
・嘔吐
・下痢
・発熱
・興奮
・不整脈
・心拍数増加
・震え
・けいれん
・発作
こうした症状はテオブロミン摂取後4時間以内に発症し、数日間続く場合があります。
また、発作を起こして命を落とすことさえあるのです。
犬の分解速度はヒトとは違う
テオブロミンは犬の肝臓で分解されますが、ヒトに比べて分解速度が遅いため、体内に残留する時間が長くなります。
その結果、テオブロミンによる中毒症状が起きてしまうのです。
また、猫よりも犬のほうが分解する代謝酵素が弱いことも知られています。
ヒトには適度な量のカフェインやテオブロミンは有益に働きますが、犬にとってはまったく不要な成分です。
イギリスの事例のように、興奮してはしゃいだり、おねだりしたりする状態は、カフェイン中毒の初期症状もしくは依存が始まっている状態です。
犬とヒトとでは分解速度が違うため、ほんの少量の摂取でも中毒のリスクが高まってしまうことを知っておきましょう。
犬がコーラを飲んでしまったら!
獣医師に連絡をする
犬がコーラを飲んでしまった際は、まずは呼吸の乱れや興奮がないかなど、犬の状態を冷静に観察してください。
次に、いつ、どのくらいの量のコーラを飲んだのかを紙に書き留め、すぐに獣医師に連絡を入れましょう。
自宅で吐かせるのは危険が伴うため、獣医師からの指示がない限りは無理に吐かせないほうがよいでしょう。
犬がコーラを誤飲しないために
家族間で犬に絶対コーラを飲ませてはいけないことを共有し、犬が届く場所に飲み残しのコーラを置かないなど、安全管理を徹底しましょう。
犬にコーラを飲ませてもよいのか?まとめ
常識的に考えても、犬にコーラを飲ませてはいけないことは推測できますよね。
しかし、イギリスの飼い主さんは誤った愛情で犬のわがままを聞き入れ、1年間もコーラを飲ませ続けてしまいました。
麻酔をかけての抜歯に至ったものの、犬の命に別状がなかったことだけは幸いです。
もし飼い主さんが、コーラには糖分だけでなくカフェインやテオブロミンなど、犬の命を脅かす成分が入っていることを知っていたら、決して与えていなかったことでしょう。
犬にコーラを飲ませることの危険性を家族で共有すると同時に、誤飲がないような環境作りを徹底しましょう!