犬にさんまを食べさせても大丈夫!
さんまは漢字で「秋刀魚」と表記するように、秋が旬のさんまは脂がのって格別に美味しいもの。今では冷凍技術の進歩で1年中美味しいさんまを食することができますね。
結論からお伝えすると、犬にさんまを食べさせても大丈夫です。ただし、知っておきたい注意点もいくつかあります。
今回は、さんまの栄養やどんな健康効果が期待できるのか、犬にさんまを食べさせる場合はどんな点に注意すればよいのかについて、詳しくお話ししていきます。
さんまには犬にも嬉しい栄養素がたっぷり
青魚の代表格でもあるさんまには、タンパク質や脂質、ビタミン・ミネラル類、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれています。さらに、さんまは脂が多いため、カロリーが高いのも特徴です。
「焼きさんま・中1尾」と、同じ分量に相当する「焼いたささみ・2本」で比較して、さんまの特徴を見てみましょう。
※各100g中
食品名 | カロリー | タンパク質 | 脂質 | EPA | DHA |
焼きさんま | 313kcal | 23.3g | 22.8g | 1,300mg | 2,000mg |
焼ささみ | 127kcal | 27.3g | 1.3g | 1mg | 5mg |
焼さんまのタンパク質は焼ささみと同程度ですが、カロリーは2倍強、脂質は17倍強です。
中性脂肪を下げる作用があるEPAやDHAは、比較にならないほど多く含まれていることがわかりますね。
EPAやDHAが犬に与える健康効果
EPAやDHAは、血流アップや脳の活性化にかかわるオメガ3系脂肪酸の代表的な成分です。
犬にも人間と同じような働きを持っていることが知られており、犬の認知症予防・改善や学習能力の向上、老化防止、関節疾患の炎症や疼痛の緩和などが期待されています。
特に、EPAはアトピー性皮膚炎への抗炎症作用が、DHAは動物のガンや腫瘍の予防・治療にも有益だとして、注目を浴びています。
犬にさんまを食べさせる際の注意点
カロリーオーバーに注意
さんまには犬の健康によい栄養素が豊富ですが、カロリーが高いのが気になります。カロリーオーバーをしないよう、適切な分量を食べさせましょう。
ドッグフードを食べているワンちゃんなら、栄養バランスを壊さないよう、たまに食べさせる程度にします。また、さんまで摂ったカロリー分を減らすために、いつもよりドッグフードを少な目にすれば安心です。
手作り食にさんまを使う場合は、カロリーを考えて食べさせ過ぎに注意してくださいね。
EPAやDHAの過剰摂取も考慮して
EPAやDHAは、犬にも人間と同じように働くことから、過剰摂取にならないよう注意したほうがよいでしょう。
厚生労働省では、人間のEPAやDHAの過剰摂取によるエビデンス(証拠、根拠)が不十分なため上限量を設定していませんが、極端に大量摂取することは健康障害の懸念があるとしています。
18歳以上の望ましい摂取量は1日に1g(1,000mg)としているので、仮に人間の体重を50kgとして体重10kgのワンちゃんに当てはめるなら、1/5の200mg程度が目安です。
表で確認したように、さんまには大量のEPAやDHAが含まれているので、ワンちゃんの体重に応じてさんまを食べさせる量を決めてください。
また、さんまを茹でた場合は、茹で汁にEPAやDHAが溶け出します。ほぐした身に茹で汁を掛けたり、汁だけをドッグフードに掛けたりして食べさせてあげましょう。
さんまの寄生虫による食中毒に注意!
近年、魚介類に寄生する寄生虫“アニサキス”による食中毒の件数が急増しています。アニサキスが寄生する魚としてはサバが有名ですが、実は、さんまやあじにも寄生することがあるのです。
アニサキスは、体長2~3cm、幅1mmほどで、白っぽい色をしています。
人間の場合、アニサキスが胃や腸に突き刺さると、激しい腹痛や吐き気、場合によってはアナフィラキシーショックを起こすことがあるため、犬も似たような症状を起こすことが考えられます。
アニサキスは主に内臓に潜んでいますが、鮮度が落ちると刺身部分となる筋肉に移動します。内臓を処理したからといって、犬にさんまの刺身を食べさせるのはよくありません。
国立感染症研究所によると、十分な加熱(60℃で1分以上)することで確実に感染を予防できるとのこと。また、マイナス20℃以下で24時間以上冷凍することで、アニサキスは感染性を失うとしています。
犬がアニサキスで苦しまないよう、生のさんまや内蔵を食べさせることは避け、できるだけ鮮度の高いさんまを加熱してから食べさせましょう。
ヒスタミン中毒を起こさないために
ヒスタミン中毒とは、さんまやあじ、まぐろ、かつお、さば、いわしなどに多く含まれる、アミノ酸のヒスチジンが原因で起きるアレルギー様食中毒です。
ヒスチジンは、タンパク質そのものに含まれている成分で加熱しても破壊されず、含有量が増えすぎると頭痛やじんましんといった症状を引き起こします。
長期保存や常温保存などでヒスタミンの量が増えることから、購入したさんまは室温で放置せず早く冷蔵庫に入れる、冷蔵の場合は早く食べる、冷凍と解凍を繰り返さないようにして、ヒスタミン中毒を予防しましょう。
さんまの小骨は除去してから
人間ならさんまの小骨を咀嚼することが可能ですが、犬の歯は臼歯といえども尖っているため、すり潰すことには向いていません。
犬は食べ物を丸飲みするので、喉に引っ掛かりやすい骨や小骨などは除去し、身をほぐしてから食べさせてあげましょう。
大切な愛犬だからこそ新鮮なさんまを食べさせよう
大型犬以外は人間よりも体重が軽いため、少量のさんまでも十分に栄養が摂れます。その分、悪影響も顕著に出やすいもの。栄養素の過剰摂取や食中毒を防ぐためにも、鮮度の高いさんまを選び、毎日食べさせるのは控えましょう。
鮮度が高く脂がのったさんまを選ぶには、クチバシが黄色いものがよいと言われています。しかし、冷凍技術の高まりにより、黄色くても鮮度がよくないものがスーパーに並べられているそうです。
鮮度を見極めるにはクチバシだけでなく、目が淀んでいないか、鱗が綺麗か、肌艶がよいか、浸けられている水が茶色く濁っていないか、といった点も確認してください。
初めてワンちゃんにさんまを食べさせる際は健康状態のよいときを選び、少量に留めて様子を観察しましょう。