犬に水道水を飲ませても基本的に大丈夫
犬の飲み水に水道水を選んでもよいのか、漠然とした不安をお持ちの飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
結論からお伝えすると、犬に水道水を飲ませても基本的には大丈夫です。
水道水は基準に沿って清潔な状態で提供されていますが、場合によってはカルキ臭が強かったりサビ臭がしたりすることもありますよね。
今回は、犬に水道水を飲ませるにあたり、知っておきたい水道水の知識や犬に飲ませる際の注意点などを紹介します。
犬に水道水を飲ませる前に知っておきたいこと
日本の水道水は安全なのか?
日本の水道水は「蛇口からそのまま飲める水」といわれるほど、衛生面や安全性が高いのが特徴です。
家庭に供給される水道水や、飲料可能なことがわかっている水道水なら、犬に飲ませても大丈夫です。
もちろん、消毒のための塩素は使用されていますが、WHO(世界保健機関)の定める飲料水水質ガイドラインや、日本の水道法に則った残留塩素濃度となっています。
国内の水道法では、残留塩素濃度を0.1/mg/L以上含み、上限目標値を1mg/L以下にすること、と定められています。
わずかに塩素を残すことにより、大腸菌などのバクテリアの発生を防ぐことができるからです。
また、水道の元となる原水(河川・井戸水など)の汚染度合いによっては、次亜塩素酸カルシウム(カルキ)などを添加してバクテリアを塩素殺菌しています。
お住いの地域の水道局で残留塩素濃度を公開しているので、濃度を知りたい場合は確認してみてください。
発がん物質の「トリハロメタン」は大丈夫?
水道水の殺菌のために用いられる塩素は、発がん物質「トリハロメタン」を生み出すことが知られています。
しかし、水道局ではこの点を考慮して、塩素添加のほか活性炭やオゾン、逆浸透膜による浄化など、あらゆる処理技術で水質基準値以下の水を提供しています。
また、東京都水道局によると、発がん性物質に対する水質基準は、生涯にわたり水を飲んでも人の健康に影響が生じない水準を基に定めているとのこと。
超大型犬のように人間と同じような体重の犬であっても、水道水を飲み続けることでガンになるリスクは低い、と考えてよいでしょう。
水道水の硬度について
水の硬度は、含まれるミネラルの量によって分けることができます。
ミネラルには多くの種類がありますが、WHOの基準では1L中のカルシウムとマグネシウムの含有量によって、「軟水」・「硬水」の2つに分類されています。
軟水:100mg/L未満
硬水:120mg/L以上
一般的には、上記に加えて「中硬水」を加えることもあるので、参考として基準を記載しておきます。
軟水:100 mg/L未満
中硬水:100mg以上300mg/L未満
硬水:300mg/L以上
日本の水道水の多くは軟水ですが、鹿児島県や千葉県、沖縄県の一部地域では硬水として供給されています。
シリカ含有量が高い水道水でシリカ尿路結石症になることも
水道水中にミネラルの1種のシリカが多く含まれることによって、犬がシリカ尿路結石症になるリスクが高まるようです。
結石としてよく知られるストルバイトやシュウ酸カルシウムによる結石に対して、シリカ結石はまれな結石です。
鹿児島大学と東京海洋大学による共同研究チームは、鹿児島県で飼育される犬のシリカ尿結石の発症原因に飲料水との因果関係が示唆されたことを受け、国内のいくつかの地域の水道水中のシリカ濃度を測定しました。
測定結果でシリカ濃度が高い地域は、鹿児島県霧島地方、大分県竹田市、茨城県筑西市付近とのこと。
犬がなぜシリカの多い水を飲むとシリカ結石のリスクが高まるのか、論文内容の一部を以下に抜粋します。
“シリカはpHが8.5以上で急速に溶解しやすくなることが知られている。一般にイヌの消化管pHはヒトよりもやや高い傾向があり、まれにpHが8.5以上程度になる。
イヌがコロイド状シリカを含む水を飲水し、消化管内でpHがアルカリ側に傾いているとコロイドが溶解し生体に容易に吸収されるようになると推測している”
どうやら、ヒトでは問題とならないシリカとペーハーの関係が、犬の体内ではシリカ結石を生み出すことがあるようです。
水道水中のシリカを除去するには?
同研究では、鹿児島県霧島地方の水を「家庭用浄水器」でろ過しても、シリカは除去されないことも明らかにしました。
ただし、「RO膜型浄水器」であれば水道水中のシリカを除去できるそうです。
シリカ含有量が多い地域にお住まいの方は、犬のシリカ結石の予防のためにも積極的に活用したほうがよいでしょう。
また、同研究では、シリカ好発地域以外におけるシリカ結石症の要因を調べ、特定のフードとの関連についても言及しています。
原著論文『イヌにおけるシリカ結石の誘発要因と予防[sj1] 』には、シリカ濃度が高い地域の詳細もあるので、気になる方は調べてみてください。
犬が1日に必要とする水分量は?
犬に必要な水分量の計算
獣医師会の資料によると、1日に必要な水分量は次の計算式で求められるとのことなので、参考にしてみましょう。
★体重(kg)×0.75×132(ml)
※飲み水と食品から摂れる水分を合算
例として、体重5kgのワンちゃんなら495mlになります。
この計算式で求めた水分量は、フードやおやつなどの水分量も含んでいるので、実際に飲む水の量は少し減ります。
犬が1日に必要な飲水量
犬が1日に飲む水の量は、体重1kg当たり40~60mlが正常の範囲内と考えられています。
体重5kgのワンちゃんなら、1日に飲む水の量は200~300ml程度が目安です。
ただし、食事内容や運動量、体調、季節などによって異なるので、あくまでも目安としてください。
犬がガブガブ水を飲み過ぎていたら病気のサインかも!
いつもどおりに水を与えているのに、さらに欲しがることがあれば病気を疑ってみてください。
あまりにもガブガブ飲んでいる場合、クッシング症候群や腎臓病などの病気のサインかもしれません。
「そんなに飲んじゃダメでしょ!」と水を飲ませないと病状が悪化する可能性があるので、水の制限をするのではなく、早めに獣医師の診察を仰ぎましょう。
犬に水道水を飲ませる際の注意点
浄水器を通した水道水を飲ませる
残留塩素濃度が低いことがわかっている場合以外は、必要に応じた浄水器を通した水道水を飲ませましょう。
塩素やトリハロメタン、カルキなどを体内に取り込むことは、決してよいことではありません。
また、マンションの貯水槽が生き物の死骸やサビなどで汚染されていることもあります。
浄水器を設置するだけと簡単なので、愛犬ちゃんにも浄水器でさらにきれいにした水道水を飲ませてあげましょう。
浄水や煮沸した水道水は放置しない
浄水器を通した水道水や、カルキ抜きのために煮沸した場合は雑菌が繁殖しやすくなるため、放置したまま翌日に持ち越さないほうが安心です。
こまめに飲み水を交換するほか、ボウルや給水器、浄水器のお手入れも行いましょう。
冷たいままより常温に戻した水道水を!
健康なワンちゃんならまだしも、お腹の弱い愛犬ちゃんやシニア犬にとっては、冷たすぎる水道水は内臓の負担になることも。
水道水を触った際に「冷たいな~!」と感じる季節には、あらかじめ常温に戻してから飲ませたほうがよいですね。
犬に水道水を飲ませてもよいのか?まとめ
水道水は基本的にそのまま犬に飲ませても大丈夫ですが、残留塩素やトリハロメタンを除去した水を与えたいものです。
最低でも家庭用浄水器を設置し、シリカ含有量が高い地域にお住いの方はRO膜型浄水器を設置することをおすすめします。
毎日飲む水道水で病気の要因を作らないためにも、飼い主として最善を尽くしましょうね。