犬に井戸水を飲ませてもよいが条件付き
犬に井戸水を飲ませてもよいですが、あくまでも水質調査で「飲用水として可能」と判明していることが条件です。
水質調査を受けていない井戸水は、たとえ見た目がきれいで無味無臭であったとしても、飼い主様はもちろんのこと、犬にも飲ませてはいけません。
自宅で飲用水として使用している井戸水以外は、犬に飲ませないようにしましょう。
今回は、井戸水の水質調査や衛生・安全管理、犬に飲ませる際のリスクなどについてお話しします。
井戸水の水質調査はどこでしているの?
井戸水の水質調査は、最寄りの保健所で受け付けていますが、民間企業でも行っています。
新たに井戸を設置した場合や、田舎暮らしなどで井戸付き物件に住む際は、必ず井戸水の水質調査をしてもらいましょう。
水道水の衛生管理はお住いの地域の水道事業者が行いますが、井戸水の管理は設置者の自己責任となっています。
井戸水の管理で最初にするべきことは、飲用可能なのか、安全な水なのかといった水質調査をしてもらうことです。
調査では、細菌や大腸菌、カドミウム、ヒ素などが基準値以上含まれていないか、pH値、臭気などの項目を検査します。
その結果が飲用可能だと判明すれば、犬にも井戸水を飲ませても基本的には大丈夫です。
井戸水の安全管理は継続性が必要
井戸水は、1度水質調査をしただけでは、継続的な安全性は担保されません。
定期的に井戸水の水質検査を行いましょう。
野生動物による汚染を防ぐ
井戸や井戸周辺に動物の糞尿をされてしまえば、あっという間に大腸菌などに汚染されてしまいます。
全国的にネズミやタヌキ、イノシシ、イタチ、シカ、サルなどの野生動物が生息していますし、北海道ではエキノコックスという寄生虫を持つキタキツネに注意する必要があります。
人為的な汚染物質の混入も想定する
人間が故意または過失により、なんらかの物質を混入させる可能性も想定しておきましょう。
あってはならないことですが、犬が嫌いな人が毒性のある物質を井戸水に入れるかもしれません。
また、井戸よりも高い場所や周辺に、不要になった農薬や除草剤の原液を捨てる可能性もあります。
さらに注意してほしいのは、化学肥料や家畜の糞尿を多量に施用した田畑が井戸周辺にないか、という点。
化学肥料などが土に浸透して水とともに井戸周辺や地下水に混入した場合、「硝酸性窒素(しょうさんせいちっそ)」という成分を摂取しかねないからです。
硝酸性窒素を含む水を人間が飲むと、血液に酸素がうまく回せなくなる「メトヘモグロビン血症」や「チアノーゼ」などを起こす可能性があります。
自然災害や工場の事故発生時は井戸水を飲まない
地震や火山の噴火など自然災害が発生した際や、近くの工場などで火災や化学物質の漏洩などの事故が発生した際は、安全が確認できるまでは井戸水を飲むのは控えましょう。
自然災害では、人体に有毒となるヒ素やホウ素などが地下水に混入して汚染されることがあります。
工場の事故の場合は、化学物質や油類などの混入による水質汚染が懸念されます。
人も犬も安全な井戸水を飲むために
野生動物や化学物質などによる井戸水の汚染を防ぐためには、井戸に雨水や排水などが流れ込まないような構造が求められます。
自分と愛犬の命を守るためにも、1年に1回以上の定期的な水質検査を行い、井戸周辺に人間や動物が入れないようにしておきましょう。
井戸に動物や人が立ち入れないような柵を作り、カギをかけておけば安心です。
地域で自然災害が発生した際は、人も犬も井戸水を飲むのを控え、必ず水質検査による安全性を担保してください。
また、井戸の周辺に乾電池や不法投棄された家電製品などの汚染源がないかも確認し、自らができる衛生管理を徹底しましょう。
飲用水として可能な井戸水でも犬には注意
飲用可能な井戸水と判明しても、犬にとって注意したほうがよい物質が含まれている場合があります。
例えば、鹿児島県の霧島地方や大分県竹田市、茨城県筑西市付近では、水道水中にミネラルの1種のシリカが多く含まれていることがわかっています。
シリカは、犬のシリカ尿路結石症になるリスクが高い成分なので、井戸水にどのくらい含まれているのか確認することをおすすめします。
井戸水には水道水よりもミネラルが多く含まれることもあるため、心配な人は井戸水用の浄水器を設置しておきましょう。
塩素消毒した井戸水を犬に飲ませる際の注意点
井戸水も水道水同様に、塩素注入器の設置によって塩素消毒することができます。
しかし、犬に塩素を摂らせたくない、という飼い主様も多いのではないでしょうか。
その場合は、井戸水を一度沸騰させ、冷ましてから犬に飲ませてあげましょう。
ただし、沸騰した水は消毒効果を失っていて雑菌が繁殖しやすいため、こまめに取り換えることをおすすめします。
また、含有する成分濃度が高くなる可能性があるため、一度沸かした井戸水を再沸騰させるのは避けてください。
犬に井戸水を飲ませてもよいのか?まとめ
犬に井戸水を飲ませてもよいですが、あくまでも人間が飲用可能な井戸水にしてください。
地下水の水質が変化することもあるので、最低でも年に1回以上の定期水質検査を受け、井戸周辺の衛生管理も徹底しましょう。
その上で愛犬ちゃんに井戸水を飲ませることができますが、地域によっては犬の体に影響を与えるミネラル成分が入っていることもあります。
自然の水だから安心だと思わずに、安全に井戸水を活用してください。
命の源でもある水ですから、飼い主様がきちんと管理することが大切です。